ふと思うことがある。
それは、ここ日本において私たちが普段「当たり前」だと思っていることは、果たして海外の人々にとっても当たり前なのだろうか?ということだ。
外国の文化や価値観について本やさまざまな情報を通して知っていくと、「こんなにも日本とは違うのか」と驚くことがある。
もちろん、「海外」と一言でいっても、国や地域によって文化や価値観は大きく異なる。
では反対に、海外の人々から日本を見たとき、日本の文化や習慣はどのように映っているのだろうか?
今回は、日本では当たり前になっている文化や習慣を取り上げながら、日本と海外ではどのような違いがあるのかについてまとめていこうと思う。
日本では当たり前、海外では珍しいこと
① 街中にゴミ箱が少ないのに、ゴミが少ない
日本では、街を歩いていてもゴミ箱がそれほど多くない。それにもかかわらず、道路に大量のゴミが落ちている光景を目にすることは比較的少ない。
私たち日本人にとっては、それほど不思議な光景ではないかもしれない。しかし海外から日本を訪れた人の中には、「ゴミ箱が少ないのに、なぜこんなに街がきれいなのか」と驚く人もいるという。
訪日外国人は「ゴミ箱の少なさ」をどう感じている?
日本では、街中にゴミ箱がそれほど多くない。しかし、不思議なことに街にはゴミがあまり落ちていない。
実際、観光庁が訪日外国人旅行者4,110人を対象に行った調査では、「ごみ箱の少なさ」が旅行中に困ったことの1位となっている。
私たち日本人にとっては何気ないことかもしれないが、「ゴミ箱が少ないのに街がきれい」という光景は、日本独特の習慣について考えるきっかけになるのではないだろうか。
② 公共トイレがきれい
駅や商業施設などで無料のトイレを利用できることも、日本に住んでいると当たり前に感じる。
しかし、国によっては公共トイレが有料だったり、日本とは設備や清掃事情が大きく異なったりする。そのため、日本のトイレの清潔さだけでなく、温水洗浄便座などの設備に驚く旅行者もいる。
③ 電車が時間通りに来る
これも日本を象徴する特徴としてよく挙げられる。
数分遅れただけでも遅延として案内されることがある日本の鉄道。しかし海外に目を向けると、鉄道の定時性は国や都市によってかなり違う。
海外と日本では「働き方・人生の選択」も違う?
ここまでは、街の清潔さや公共交通機関など、日本を訪れた外国人から見て分かりやすい文化の違いについて紹介してきた。
しかし、日本と海外の違いを調べていくと、もっと根本的な「働き方」や「人生の選択」にも違いがあることに気づく。
日本では学校を卒業したら企業に就職し、正社員として働くという進路を一つの一般的な道として考えることが多い。では、海外ではどうなのだろうか?
④-1 就職だけが進路ではない?海外の若者と起業
日本では、学校を卒業したら企業に就職するという進路が一般的な選択肢の一つになっている。
しかし、海外に目を向けてみると、企業に就職するだけではなく、若いうちから自分で事業を始めるという選択をする人たちもいる。
OECDが18〜30歳の若者について調べたデータでは、2018〜2022年にOECD諸国の若者のおよそ9%が、新しい事業の立ち上げに取り組んでいた。全年齢では約8%だったため、若者の方がわずかに高かった。
特に興味深いのがアメリカだ。
Global Entrepreneurship Monitor(GEM)の2024年の調査では、アメリカの18〜24歳と25〜34歳の25%が初期段階の起業活動に関わっていた。これは調査された年齢層の中でも高い水準だった。
もちろん、これは「海外では若者が就職せず、みんな起業する」という意味ではない。国によって起業する人の割合には大きな差があり、資金不足や経験不足などによって、起業したくても実際には始められない若者も多いことがOECDから指摘されている。
しかし、こうしたデータを見ると、「学校を卒業したら会社に就職する」という道だけではなく、自分で仕事をつくることも若者のキャリアの一つになっている国があることが分かる。
日本とアメリカでは起業する人の割合も違う
では、日本と海外では実際にどのくらい起業する人の割合が違うのだろうか。
Global Entrepreneurship Monitor(GEM)のデータを見ると、2022年の初期段階の起業活動率(TEA)は、日本が6.4%だったのに対して、アメリカは19.2%だった。単純に比較すると、アメリカは日本のおよそ3倍である。
また、アメリカでは2024年も起業活動率が19%となっており、特に18〜24歳と25〜34歳では25%だった。
もちろん、これは「アメリカ人の4人に1人が会社を経営している」という意味ではない。TEAには、実際に新しい事業を経営している人だけではなく、起業の準備段階にある人なども含まれている。
それでも、日本とアメリカを比較すると、「企業に就職する」以外に「自分で事業を始める」という選択肢が、アメリカでは比較的身近なものになっていることがデータからもうかがえる。
参考資料
なぜ日本より起業する若者が多い国があるのか?
では、なぜアメリカなどでは、日本よりも若いうちから起業に挑戦する人が多いのだろうか。
調べてみると、単純に「海外の若者の方が挑戦する性格だから」という話ではないようだ。
内閣府が紹介している国際比較を見ると、日本では「失敗することへの恐れ」が起業の妨げになっている人の割合が相対的に高い。また、「自分には起業に必要な能力や経験がある」と考える人や、「自分の周囲には起業する良い機会がある」と考える人も、他国と比べて少ない傾向がある。
さらに、起業にはお金だけではなく、経営についての知識や相談できる人も必要になる。中小企業庁の調査でも、若い世代では経営に必要な知識やノウハウの不足が起業する際の課題として挙げられている。
つまり、日本と海外の起業率の違いには、本人の考え方だけではなく、失敗に対する意識、教育、資金調達、周囲に起業家や相談相手がいるかといった社会的な環境も関係していると考えられる。
② 社会人になってから大学で学び直す人もいる
日本では、高校を卒業して大学へ進学し、その後企業に就職するという流れをよく目にする。
そのため、一度社会人になってから大学に入り直すことに対して、「今から大学に行くのは遅いのではないか」と感じる人もいるかもしれない。
しかし、海外に目を向けてみると、この感覚も必ずしも世界共通ではないようだ。
OECDのデータによると、日本の高等教育への新規入学者の平均年齢は2023年に18.4歳で、比較可能なOECD加盟国などの中でも非常に若い。一方、OECD全体では初めて高等教育に進む平均年齢は約22歳で、デンマークでは25歳を超えている。
つまり国によっては、高校を卒業したらすぐ大学へ進むだけではなく、働いたり別の経験をしたりした後に、高等教育を受けるという道も存在する。
「大学は10代から20代前半に通うもの」という感覚は、必ずしも世界共通ではないのかもしれない。
補足
「25歳以上で初めて大学などの高等教育に入る人」に絞ったOECDの2023年版データでは、日本はわずか1%**でした。OECD全体では初回入学者の17%が25歳以上という計算になります(83%が25歳未満)。
③ 日本と海外では履歴書も違う?
就職活動をするときに必要になるものの一つが履歴書である。
日本で履歴書を書くときには、氏名、住所、生年月日、学歴や職歴などを書き、場合によっては証明写真を貼る。私たちにとっては見慣れた形式だろう。実際、現在の厚生労働省の履歴書様式例にも、生年月日や写真を貼るための欄が用意されている。なお、性別については現在は任意記載となっている。
しかし、海外でもまったく同じ履歴書を使っているわけではない。
例えばアメリカでは、日本の履歴書に近いものとして「résumé(レジュメ)」が使われるが、日本の履歴書とは書き方や重視される内容が異なる。一般的には、これまでの職務経験やスキル、実績など、自分がその仕事で何ができるのかを伝えることが重視される。
また、履歴書に載せる個人情報についての考え方も国によって違う。日本では写真欄のある履歴書様式が現在も存在する一方、海外では写真を載せないことが一般的な国もある。
一方で、「海外では履歴書に写真を載せない」と一括りにすることもできない。例えばEUのEuropassではプロフィール画像を任意情報として扱っており、国や地域によって履歴書の文化は異なっている。
普段何気なく書いている履歴書にも、その国の採用に対する考え方や文化の違いが表れているのかもしれない。
補足:日本の履歴書も変化している
厚生労働省の現在の様式では、性別は「男・女」を選ぶ方式から任意記載に変更され、さらに「配偶者」「扶養家族数」「配偶者の扶養義務」「通勤時間」の欄も削除されています。厚労省は、応募者の適性・能力と関係のない事項を採用選考に含めないよう求めています。
「④日本の『正社員』と海外の雇用制度の違い」「④日本の『正社員』と海外の雇用制度の違い」
日本で仕事を探すとき、「正社員」「契約社員」「派遣社員」「アルバイト」といった言葉をよく目にする。
特に日本では、「正社員になる」ということを一つの目標として考える人も少なくないだろう。
では、海外にも日本とまったく同じ「正社員」という仕組みが存在するのだろうか?
調べてみると、海外にも期間を定めずに雇用される「無期雇用」やフルタイムで働く人は存在する。そのため、「海外には正社員が存在しない」というわけではない。
しかし、日本の正社員を取り巻く雇用慣行には特徴がある。
OECDは、日本の伝統的な雇用システムの特徴として、長期雇用(いわゆる終身雇用)、年功的な賃金、新卒者を一括して採用する慣行などを挙げている。つまり、日本では単に「この仕事をする人」として雇われるだけではなく、一つの会社に長く所属し、その中で仕事や勤務地が変わりながらキャリアを積んでいく働き方が発達してきた。
一方、海外では国によって雇用制度が大きく異なるため、「海外ではこうだ」と一括りにすることはできない。
それでも日本の働き方について調べてみると、「どの会社に所属するのか」を重視してきた日本の雇用と、「どのような仕事をするのか」をより明確にして採用する働き方との違いが見えてくる。
日本でも現在は変化が進んでおり、政府は職務内容をより明確にして採用・評価するジョブ型人事の導入を後押ししている。
私たちが普段何気なく使っている「正社員」という言葉も、世界共通の働き方だと思っていたが、調べてみると、日本の雇用文化や歴史と深く関係していることが分かる。
海外では転職することへの考え方も違う?
日本では、一つの会社に長く勤めることが良いことだと考えられてきた時代がある。終身雇用という言葉があるように、新卒で会社に入り、その会社で長く働き続けるという働き方も日本では広く知られている。
しかし、海外に目を向けると、転職をしながらキャリアを形成していく働き方も見られる。
例えばアメリカ労働統計局(BLS)の調査によると、2024年1月時点で、賃金労働者が現在の勤務先で働いている期間の中央値は3.9年だった。さらに25〜34歳では2.7年となっている。
もちろん、「3.9年ごとに全員が転職している」という意味ではない。これは現在の勤務先での勤続年数の中央値であり、年齢や職業によっても大きな違いがある。
それでも、アメリカの若い世代では、一つの企業に非常に長く所属することだけがキャリアの形ではないことがデータから見えてくる。
日本でも現在では転職する人は珍しくなくなっており、昔ながらの雇用のあり方も変化している。そのため「日本人は転職しない、海外の人はすぐ転職する」と単純に分けることはできない。
しかし、ここまで調べてみると、「一つの会社に所属し続けること」と「自分の経験やスキルを生かして会社を移りながらキャリアを作ること」では、仕事に対する考え方そのものにも違いがあるのではないかと感じる。
以下:参考資料

今回参考にした書籍
まとめ
今回、日本と海外の文化や働き方について調べてみて、私たちが日本で当たり前だと思っていることが、必ずしも世界でも当たり前ではないことを改めて知った。
街にゴミが少ないことや、電車が時間通りに来ることなど、普段生活しているだけではあまり意識しない日本の特徴がある。
一方で、働き方に目を向けると、若いうちから起業に挑戦する人が多い国があったり、一度社会に出てから大学などで学び直したり、転職をしながらキャリアを築いたりする人もいる。
もちろん、海外といっても国によって文化や制度は大きく違うため、「日本と海外」という二つだけに単純に分けることはできない。
それでも、海外の文化や価値観を知ることには意味があると思う。
なぜなら、自分が当たり前だと思っていた生き方が、実は数ある選択肢の一つにすぎないと気づくことができるからだ。
学校を卒業したら就職する。一つの会社で長く働く。若いうちに大学へ行く。そうした生き方ももちろん一つの選択肢だ。しかし、それ以外の道を選んでもいい。
海外の文化を知ることは、単に「日本とここが違う」と楽しむだけではなく、自分自身の生き方や働き方を改めて考えるきっかけにもなるのではないかと、今回調べてみて感じた。


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